介護。
何が起きてるのかわからなかった。
床にところどころこびりつく、「何か」。
そして激しい、噎せおこすような異臭。
この時間にしては珍しく爛々と明かりつのついた部屋に、
まるで愛犬の時みたく事切れて倒れたかのような、祖母。
躊躇した。
噎せだけはなんとか堪えきったけど、
その部屋に足を踏み入れることを確かに私は躊躇した。
7日の夜。つい数日前ですね。
ほぼ毎日毎朝、父親が仕事へ行く前に祖母の家へ寄るんですが、その時ちょっと祖母の様子がおかしかったそうで。
なんとなく心配だったのか父が母親の携帯に連絡を入れ、
悪いけど仕事が終わったら様子を見に行ってほしい、と。
当然母はああいう人ゆえ甘えた声で、「○も一緒に来て〜」。
私もいつものように「しょうがないな〜」なんて笑い合って、
先に御飯を炊く準備などを済ませ一緒に行ったんですが――
最初に「あれ?」と思ったのが外から見えた明かりだった。
なんやかんや買い物にも行って祖母宅に着いたのが19時半頃。大抵この時間だともう寝てる頃合いなのに電気がついてる。
祖母は最近はあまり家から出たがらず、
殆ど食べるか寝るかだった。
週一のデイサービスも気分が乗らない、
キツイという理由で当日ドタキャンすることは日常茶飯事。
人に気を使う人ゆえ人とあまり関わりたく無いんでしょうが、
祖母は一人で暮らしてるし上記の事から痴呆症も進んでる。
とはいえ御年92歳の祖母曰く「田舎育ちの強み」?
足腰は曲がらずにシッカリしてるし、杖も要らない。
何より計算に関しては優秀すぎるぐらいの人です。
明かりがついてることを訝しみながら、祖母の家の玄関はちょっと外からは開けずらい仕組みになっていて、事務所側のドア(昔はカーテンを作る御店だった)からお邪魔することに。
それからはもうただただ地獄絵図。
絶句した。居間は壮絶だった。
どうすればいいとかそんなことを考える余裕も無く、
ただただ何が起きたのかわからなくて、固まってた。
噎せだけは堪えたけどそこから一歩も動けない自分と、
盛大に噎せながらも部屋へ入り、一生懸命に動く母親。
呆然とそれを見ながら、やっと少しずつ冷静に戻れて。
母親に指示を仰ぎ父親に電話して、祖母をお風呂場まで連れてって。幸い倒れてる様に見えた祖母は眠っていただけだった。
床だけで無く手も足も着ている洋服も、「それ」で汚れてて。
もう本当最悪の場合しか考えられなかっただけに安堵した。
仕事が終わり次第駆けつけてくれた父親は、
すごくショックを受けてた。
父親が到着する前に部屋は母親が出来る限り綺麗にしていたし、あの光景そのものを父親は見たわけじゃ無いけれど――…
換気をしてもその部屋に充満する強く滲みつくような臭いとか、
今にもぽっきりと折れてしまいそうな、枯れ樹の様な身体とか…
無理も無いけど、その日は殆ど御飯を食べて無かった。
すべて終わらせて母親の車に乗った瞬間、
初めて身体から息を吐きだせた気がした。
でもねぇ、わかるんだなぁ…
こうやって、やっとほっと一息ついてる瞬間も、
父親は父親の車の中で私と母を気にしてる。
おばあちゃんの家の中でもなるべくいつも通り、
普通になんでもないことの様に振舞ったけれど、
それでも父親は父親で、私や母親を気遣ってる。
あのとき母親と一緒に行ってよかったと、つくづく思った。
あんな光景たとえ母でも一人じゃ到底受けとめられない。
そうしてそれから毎朝毎夜、祖母の家に寄るように。
朝は時間の関係上母親は無理なので私と父。夜は母と私で。
そして今日は父親が仕事休みだったことから、
あれこれと買い物を終えて祖母宅に。――が、
祖母はプライドの高い人だ。
自分で出来るから必要無い、帰っていいと言ってきかないし、
ケアマネージャーさんに相談してショートステイも検討してるけど「これ以上老いぼれた姿を見せたく無い」と祖母は頑として拒絶。
――が、ここでめげちゃあいけない。
何かと邪魔くさい父親を二階へ追いだして、
いざ口説きの姿勢へ。
もうね、私は祖母に話してるのにいちいちそれに父親が返事するんですよ!流石に二日連続そうだとただでさえ小さい私の堪忍袋も緒が切れるどころか火を吹くわ…!
祖「まったく歳はとりたくないね、こんな面倒掛けるんだから」
莉「あのね、そんなの○だっていつかはなるんだから。おばあちゃんだけじゃ無いの。おばあちゃんなんて足腰強いだけまだいい方だよ。○なんて絶対その歳になる頃には曲がってる」
今日はなるべく身体を起こさせるようにするべし。
母親の厳命を胸に、すぐさま横になろうとする祖母をガッチリ座った状態のまま捕まえる。
莉「駄目。おばあちゃん駄目よ。ちゃんとシャワーで綺麗にするの。今日はパパ御休みだから時間もたっぷりあるしね。ゆっくりでもいいからするよ!」
祖「………はぁ………○しゃんは厳しいねぇ(苦笑)」
莉「そうよ、○は厳しいの。ママ仕込みだからね。覚悟して頂戴」
自分で自分のものを処理出来ないっていうのは、たぶん本人にとってはすごく恥ずかしく尊厳が傷つくことだと思う。赤ちゃんの頃は羞恥心なんてまだ無い状態だから、いいけれど。
私だって同じ立場になったら同じようにきっと拒否する。
「じゃあお願いします」なんて天地が逆さまになっても思わない。
なのに祖母にはそれを押し付けておぃおぃ…って自分でも思う。
それでも、
祖「よし、やろうか。ぐだぐだしてる方が迷惑掛けちゃうしね」
その潔さ好し…! 私の周りの女性はなんというか、
男顔負けな女性が多いんだよな…北海道の祖母然り。
そのくせ女性らしさも兼ね備えてるから素敵です♪(←
息子にそういった姿は見せたく無いだろう故、
既に二階には追いだしたがシャワー&薬塗り、
オムツをしてる間は父親には二階へ。
その間に昨日洗濯した物を畳んでおいてもらうのと、
おばあちゃんの上着を持ってきてくれるようお願いする。
あとは呼ぶまで二階でテレビでも見て待機しとくように!
それでも暇なら御茶っぱ買ってきて、…と。
おばあちゃん御茶よく飲むからもう無いし。
恐ろしいかもしれないが女というのはつくづく強かなのです。
嫁や孫、蓋し母親や私にだって本当はすごく抵抗あると思う。
お尻を突き出したりとか、誰だってそんなポーズとるのは恥しい。
実にデタラ〜メな歌を歌いながら、
出来るだけリラックス出来るようにしたり、
女の人はかぶれやすいから入念にしようね〜
薔薇の香りなんておばあちゃん高貴〜!等、
声を掛けながらあれこれとしてるけど、
何せすべてが初めてでそれが良いのかどうかも自信が無い。
弟も妹もいないし、
ましてや赤ちゃんだって産んだことも無く。
親の介護だって父が入院してる際のちょろっとの経験しか無い。
それでも「右へころーん」といえば右へころんと転がってくれオムツやスカートを穿かせる時も腰を浮かせてくれたりと協力的だったおばあちゃん。ド素人の私はすごく助かりました。
これから先のことも考えるともっと手際よく、
そして相手に負担を掛けないやり方を会得したいものです。
かといってそのために介護の資格とかは考えて無いしねぇ…
介護って本当に難しいよ。
床にところどころこびりつく、「何か」。
そして激しい、噎せおこすような異臭。
この時間にしては珍しく爛々と明かりつのついた部屋に、
まるで愛犬の時みたく事切れて倒れたかのような、祖母。
躊躇した。
噎せだけはなんとか堪えきったけど、
その部屋に足を踏み入れることを確かに私は躊躇した。
7日の夜。つい数日前ですね。
ほぼ毎日毎朝、父親が仕事へ行く前に祖母の家へ寄るんですが、その時ちょっと祖母の様子がおかしかったそうで。
なんとなく心配だったのか父が母親の携帯に連絡を入れ、
悪いけど仕事が終わったら様子を見に行ってほしい、と。
当然母はああいう人ゆえ甘えた声で、「○も一緒に来て〜」。
私もいつものように「しょうがないな〜」なんて笑い合って、
先に御飯を炊く準備などを済ませ一緒に行ったんですが――
最初に「あれ?」と思ったのが外から見えた明かりだった。
なんやかんや買い物にも行って祖母宅に着いたのが19時半頃。大抵この時間だともう寝てる頃合いなのに電気がついてる。
祖母は最近はあまり家から出たがらず、
殆ど食べるか寝るかだった。
週一のデイサービスも気分が乗らない、
キツイという理由で当日ドタキャンすることは日常茶飯事。
人に気を使う人ゆえ人とあまり関わりたく無いんでしょうが、
祖母は一人で暮らしてるし上記の事から痴呆症も進んでる。
とはいえ御年92歳の祖母曰く「田舎育ちの強み」?
足腰は曲がらずにシッカリしてるし、杖も要らない。
何より計算に関しては優秀すぎるぐらいの人です。
明かりがついてることを訝しみながら、祖母の家の玄関はちょっと外からは開けずらい仕組みになっていて、事務所側のドア(昔はカーテンを作る御店だった)からお邪魔することに。
それからはもうただただ地獄絵図。
絶句した。居間は壮絶だった。
どうすればいいとかそんなことを考える余裕も無く、
ただただ何が起きたのかわからなくて、固まってた。
噎せだけは堪えたけどそこから一歩も動けない自分と、
盛大に噎せながらも部屋へ入り、一生懸命に動く母親。
呆然とそれを見ながら、やっと少しずつ冷静に戻れて。
母親に指示を仰ぎ父親に電話して、祖母をお風呂場まで連れてって。幸い倒れてる様に見えた祖母は眠っていただけだった。
床だけで無く手も足も着ている洋服も、「それ」で汚れてて。
もう本当最悪の場合しか考えられなかっただけに安堵した。
仕事が終わり次第駆けつけてくれた父親は、
すごくショックを受けてた。
父親が到着する前に部屋は母親が出来る限り綺麗にしていたし、あの光景そのものを父親は見たわけじゃ無いけれど――…
換気をしてもその部屋に充満する強く滲みつくような臭いとか、
今にもぽっきりと折れてしまいそうな、枯れ樹の様な身体とか…
無理も無いけど、その日は殆ど御飯を食べて無かった。
すべて終わらせて母親の車に乗った瞬間、
初めて身体から息を吐きだせた気がした。
でもねぇ、わかるんだなぁ…
こうやって、やっとほっと一息ついてる瞬間も、
父親は父親の車の中で私と母を気にしてる。
おばあちゃんの家の中でもなるべくいつも通り、
普通になんでもないことの様に振舞ったけれど、
それでも父親は父親で、私や母親を気遣ってる。
あのとき母親と一緒に行ってよかったと、つくづく思った。
あんな光景たとえ母でも一人じゃ到底受けとめられない。
そうしてそれから毎朝毎夜、祖母の家に寄るように。
朝は時間の関係上母親は無理なので私と父。夜は母と私で。
そして今日は父親が仕事休みだったことから、
あれこれと買い物を終えて祖母宅に。――が、
祖母はプライドの高い人だ。
自分で出来るから必要無い、帰っていいと言ってきかないし、
ケアマネージャーさんに相談してショートステイも検討してるけど「これ以上老いぼれた姿を見せたく無い」と祖母は頑として拒絶。
――が、ここでめげちゃあいけない。
何かと邪魔くさい父親を二階へ追いだして、
いざ口説きの姿勢へ。
もうね、私は祖母に話してるのにいちいちそれに父親が返事するんですよ!流石に二日連続そうだとただでさえ小さい私の堪忍袋も緒が切れるどころか火を吹くわ…!
祖「まったく歳はとりたくないね、こんな面倒掛けるんだから」
莉「あのね、そんなの○だっていつかはなるんだから。おばあちゃんだけじゃ無いの。おばあちゃんなんて足腰強いだけまだいい方だよ。○なんて絶対その歳になる頃には曲がってる」
今日はなるべく身体を起こさせるようにするべし。
母親の厳命を胸に、すぐさま横になろうとする祖母をガッチリ座った状態のまま捕まえる。
莉「駄目。おばあちゃん駄目よ。ちゃんとシャワーで綺麗にするの。今日はパパ御休みだから時間もたっぷりあるしね。ゆっくりでもいいからするよ!」
祖「………はぁ………○しゃんは厳しいねぇ(苦笑)」
莉「そうよ、○は厳しいの。ママ仕込みだからね。覚悟して頂戴」
自分で自分のものを処理出来ないっていうのは、たぶん本人にとってはすごく恥ずかしく尊厳が傷つくことだと思う。赤ちゃんの頃は羞恥心なんてまだ無い状態だから、いいけれど。
私だって同じ立場になったら同じようにきっと拒否する。
「じゃあお願いします」なんて天地が逆さまになっても思わない。
なのに祖母にはそれを押し付けておぃおぃ…って自分でも思う。
それでも、
祖「よし、やろうか。ぐだぐだしてる方が迷惑掛けちゃうしね」
その潔さ好し…! 私の周りの女性はなんというか、
男顔負けな女性が多いんだよな…北海道の祖母然り。
そのくせ女性らしさも兼ね備えてるから素敵です♪(←
息子にそういった姿は見せたく無いだろう故、
既に二階には追いだしたがシャワー&薬塗り、
オムツをしてる間は父親には二階へ。
その間に昨日洗濯した物を畳んでおいてもらうのと、
おばあちゃんの上着を持ってきてくれるようお願いする。
あとは呼ぶまで二階でテレビでも見て待機しとくように!
それでも暇なら御茶っぱ買ってきて、…と。
おばあちゃん御茶よく飲むからもう無いし。
恐ろしいかもしれないが女というのはつくづく強かなのです。
嫁や孫、蓋し母親や私にだって本当はすごく抵抗あると思う。
お尻を突き出したりとか、誰だってそんなポーズとるのは恥しい。
実にデタラ〜メな歌を歌いながら、
出来るだけリラックス出来るようにしたり、
女の人はかぶれやすいから入念にしようね〜
薔薇の香りなんておばあちゃん高貴〜!等、
声を掛けながらあれこれとしてるけど、
何せすべてが初めてでそれが良いのかどうかも自信が無い。
弟も妹もいないし、
ましてや赤ちゃんだって産んだことも無く。
親の介護だって父が入院してる際のちょろっとの経験しか無い。
それでも「右へころーん」といえば右へころんと転がってくれオムツやスカートを穿かせる時も腰を浮かせてくれたりと協力的だったおばあちゃん。ド素人の私はすごく助かりました。
これから先のことも考えるともっと手際よく、
そして相手に負担を掛けないやり方を会得したいものです。
かといってそのために介護の資格とかは考えて無いしねぇ…
介護って本当に難しいよ。